【釣具に歴史あり】ヤマリア編 第3回 ヤマリアが見据える“エギングの未来”

特集:釣具に歴史ありとは?

釣具に歴史あり。数多ある釣具の歴史を紐解いていくシリーズ企画です。いかにして現代の釣具は形作られてきたのでしょうか?普段の釣行では何気なく使っている釣具。しかしその歴史に触れると、また違った見え方になるかもしれません。

ヤマリア編最後のテーマは「エギングの未来」。ヤマリアのスタッフはこの先エギングという釣りをどのように考えているのでしょうか?開発部 研究チーム 森さん・マーケティング部 エギG マネージャー天野さんのお2人にインタビューします!

【シリーズの記事はこちら】
第1回「エギング黎明期とヤマリアの歩み」
第2回「エギ王の登場!ヤマシタの開発哲学に迫る」
第3回「ヤマリアが見据える“エギングの未来”」


ヤマリア:森さん

開発部研究チームに所属。日々「釣れるエギとは何か?」を考え、ヤマシタのエギ開発に尽力している。

ヤマリア:天野さん

マーケティング部エギグループマネージャー。ヤマシタのエギをプロデュースしている。


「EGING」が秘める可能性

ツリグラ編集部(以下 編):現在エギングはポピュラーな釣りになっていますが、 いわゆる「エギング人気のピーク」となった時期はいつ頃なのでしょうか?

天野さん:PEラインが普及したあたりの2000~2005年から盛り上がりをみせ、2009年頃がピークになっています。それから10年たった現在でも少しずつエギング人口が増えてきている印象です。

森さん:まだまだエギングには色んな可能性が残されていますしね。

編:具体的にはどのような可能性があると考えていますか?

天野さん:例えば、2010年頃から「ティップラン」と呼ばれる新しいジャンルの釣りが生まれてきました。ティップラン釣法というのは漁師さんがやっている「引き釣り」のように船からエギを引いてイカを狙う釣り方です。北陸や九州にかけてもどんどん広まってきています。エギそのものの進化はもちろん、タックル全体が進化していることが大きいですね。

編:ちなみに世界の釣り人からエギングは認知されているのでしょうか?

天野さん2000年以降から韓国・香港・オーストラリア(日本と経度が同じ国)を中心にエギングは確実に広まってきています。日本と同じような釣り方でイカが釣れるので。オーストラリアのパースでヤマシタエギングマイスターでもある川上英佑がエギングセミナーを行った際には300名ほど参加者が集まりました。

編:300名・・・!もしかすると日本以上のポテンシャルがあるのかもしれません。

オーストラリアで行われたエギングセミナーは大盛況!


未来のエギングはどう変化するのか

編:エギングをしていると、ふと「なんでエギはこの形をしているんだろう」と感じる時があります。漠然とした疑問ですが、未来のエギは果たして現在の形を残しているのでしょうか?

森さん:長い歴史が物語るように、現在のエギの形状はイカを釣るために完成された形だと思います。なのでこれから先もこの形は残るでしょうね。しかし、現在のエギには無い新たな機能を持たせた場合、形状は変化していくかもしれません。

編:新しい機能・・・考えるだけでワクワクしますね。

森さん:開発過程の話をすると、積極的に新しい材料をトライアルしてみるようにしています。現時点で実戦投入ができなくても5年先ではもしかしたら使えるかもしれません。仮にその時点では使えない材料であっても何かしらのフィードバックはあるので、チャレンジしたことは未来の財産になりますしね。

編:イカの生態研究を製品にフィードバックしているのも、「ヤマリアさんならではの挑戦」と言っていいのかもしれません。

天野さん:ヤマリアの理念は「新しい釣りの提案」です。それは単純に新しい釣り方を提案する、というものだけではありません。例えば・・・イカを釣りたいと思っている方は多いですが、最初はどこでどんな釣りをしたらいいかわからないのが普通ですよね。そんな方に「何気なくサビキ釣りをしているその場所にイカがいますよ!」ということを発信できればと思っています。そういった取り組みを通じてイカをもっと身近に感じていただけると嬉しく思います。


ヤマリアからアングラーへの想い

編:少し漠然とした質問なのですが、これから先ヤマリアさんが「メーカーとして目指す未来」についてお話いただけますか?

天野さん:もちろん「釣具メーカーとしてのヤマリア」を多くの方に知っていただきたいのはあります。一方で、釣りというレジャー全体を見てアングラーの皆さんと一緒に成長していきたい想いが強いです。

編:成長、と言いますと?

天野さん:例えば資源保護と環境保全の部分ですね。ヤマリアでは「アオリコミュニティ」というアオリイカを増やす活動を行っています。産卵床を沈めるなど、未来の釣りを守るための取り組みです。

アオリコミュニティの活動で沈めたイカの産卵床
産卵床に集まるイカたち。未来の釣りを守るための意義のある活動となっている。

森さん:モノづくりの面でもエギのシンカー素材を鉛から環境負荷の少ないスズに変更しました。私たちが釣る魚(イカ)は貴重な水産資源でもあります。このことを漁業関係者だけではなく、釣り人側も理解していただきたい。エギ王コミュニティのオフ会ではアオリイカの生態をレクチャーしているのですが、その会の中でも産卵前のイカは持ち帰らないようにオススメしています。産卵前のイカは見分けることができますので。

編:なるほど・・・釣り場を維持するのは何より重要なことですよね。

森さん:他にも「ライフジャケットは必ず身に着ける」「釣り場に付いたエサは洗い流す」といった釣りをする上で基本的なこともレクチャーしています。地道な活動になりますが、未来の釣りを守るためにも必要な取り組みだと考えています。

編:確かに不法投棄まみれの釣り場をたまに見かけますね。ライフジャケットの着用もネット上で指摘されていたり・・・。

森さん:既に釣りを楽しんでいる方だけでなく、今から釣りを始める方にもメーカーとしてきちんとした知識・マナーをお伝えできればと。何より釣りって楽しいじゃないですか(笑)釣った魚を持ち帰ってみんなで美味しく食べる。この当たり前のことを守る一翼を担うことができれば、これに勝るものはありません。

今後もヤマリアの挑戦に注目!

全3回でお届けした「釣具に歴史あり ヤマリア編」。伝統ある漁具メーカーから独自色を持った釣具メーカーへ進化したヤマリア。さらにこの先も私たちに新しい釣り・新しい価値を提供してくれることでしょう。取材陣はイカの生態研究まで深堀する同社から並々ならぬ釣りへの情熱を感じました。

これから先もヤマリアが提供し続ける「新しい釣り」に注目です!