【釣具に歴史あり】シマノ編 第1回「シマノイズムの形成」

特集:釣具に歴史ありとは?

釣具に歴史あり。数多ある釣具の歴史を紐解いていくシリーズ企画です。いかにして現代の釣具は形作られてきたのでしょうか?普段の釣行では何気なく使っている釣具。しかしその歴史に触れると、また違った見え方になるかもしれません。

そして今回はついに!釣り人ならば誰もがご存知のメーカー、シマノの登場です!

第1回のテーマは、ズバリ「シマノイズム」の形成。「シマノのリール」をキーワードに同社の開発哲学に迫ります。釣り人ならばシマノを知らない人はいないはず。そんな日本を牽引する釣具メーカーのシマノですが、どのようにして釣具の製作を開始し、どのような想いでモノづくりに取り組んでいるのでしょうか?

今回は特別な許可を頂き、謎のベールに包まれたシマノ本社に潜入!超・極秘取材ということでシマノのリール開発一筋、開発部門のレジェンドにインタビュー!!!

【シリーズ記事はこちら】
第1回「シマノイズムの形成」
第2回「スコーピオン、そしてステラの誕生。シマノ新時代へ。 」



シマノ初のリールとは?

ツリグラ編集部(以下、編):今回は極秘インタビュー、ありがとうございます!「SHIMANO」と言えば、釣具以外にも自転車などで他業界にも名を轟かせているメーカーだと思います。早速ですが、まずは「釣具メーカー」となった経緯から教えていただけますか?

レジェンドH氏:釣り業界へは1970年に参入しましたね。当初から「総合釣具メーカー」としてスタートしました。実は他メーカーの事業自体を受け継いだ形なので、ロッド・クーラーボックスなんかも製造していたんですよ。

編:あれ、てっきり初めはリールだけ販売していたのかと・・・!

レジェンドH氏:元が自転車メーカーで現在では「ギアのシマノ」と言われるくらいですから、若い方ならそのイメージがありますよね。リールに関して言えば、1971年に発売したスピニングリール「DUX(ダックス)」がシマノ初となります。

グランフロント大阪 「シマノスクエア」に展示されているDUX 1500

編:おおー!なんというか、歴史を感じますね 笑

レジェンドH氏:満を持して発売したDUXですが、発売当初から大注目を浴びていたわけではありません。自転車メーカーのシマノがリールをつくったことで釣りびとからの注目は高かったようですが・・・。あくまで釣具メーカーの1つが出したリールとして認知されていたと思います。私も当時一人のユーザーとして使っていましたが、「ごく普通のリールだった」という記憶しかないですね 笑

編:初めからそんなに上手くはいかないものですね・・・。


エポックメイキングとなったリールとは?

編:そんな中でもやはりシマノの名を広めたきっかけとなるリールがあったのでしょうか?

レジェンドH氏:やはり、大きな転換点となったのは1976年にアメリカのLew’s社と共同で開発したベイトリール「BB-1」の発売ですかね。世界初の非円形リールということで・・・それはそれはウケたそうですよ 笑。翌年1977年に日本市場向けに売り出したのが「BM-1」でした。これが後にバンタムへと繋がっていくシマノの礎となったリールです。

世界初の非円形リール「BM-1」
こちらはシリーズ2代目となる「BM-2」
ハンドルは本革を思わせるシックなデザイン!

編:これまた渋くてカッコイイ・・・!どういった点が釣り人にウケたのでしょうか?

レジェンドH氏:当時のベイトリールと言えば、やはり丸型が主流。しかし当時のアメリカの釣り場を半年かけて市場調査と実釣テストを行った結果、シマノ開発者には「これが本当に最適なのか?」という思いがつのりました。そこで「釣り人の手に本当にフィットする形とは?」というのを突き詰めた結果、BM-1のようにパーミングしやすい形状に進化したわけです。

編: 釣り人の目線で考えられた、というわけですね。「言うは易し」ですが、それを体現しているのが単純にすごい・・・。


シマノの「商品開発の哲学」とは?

編:色々な試行錯誤をしながら当時のリールづくりに取り組んでいたシマノさんですが・・・モノづくりの現場で大切にしていた「判断基準」のようなものはあったのでしょうか?

レジェンドH氏:とにかく現場でモノを見極める「現場実釣主義」。これが現在の商品開発にも息づく、シマノの考え方です。「フィールドで本当に使いやすいのか?」を突き詰めることが商品開発の根っこの部分にあります。フィールドからのフィードバックが商品に反映されるわけです。

編:現場実釣主義・・・なるほど。

レジェンドH氏:私たちは「釣り」という趣味は同じ状況が二度とない、その一瞬一瞬を体感するスポーツだと思っています。「作り手としてその一瞬にいかに貢献できるか?」を究極まで考える。これがシマノの精神です。

編:確かにタックルに不安があると釣りに集中はできないですよね。

レジェンドH氏:例えば細い糸で魚を掛けると、ちょっと不安を感じますよね?バレるんじゃないかと。そう思ってやりとりをすると、やっぱりバレちゃうものなんですよ 笑。釣り人が感じるストレスを減らし、釣りそのものに集中してもらうためのタックルを届ける。これが私たちの使命だと思っています。

編:その考え方があったからこそ 「世界初の非円形リール」といった革新的なアイテムも誕生したように感じます。


——— 1970年に釣り業界へと参入したシマノ。釣具メーカーとして進化する過程で「現場実釣主義」のフィロソフィーが構成されていきました。続く第2回では誰もが耳にしたことのある、あのリールたちの誕生に迫ります。 ———


<第2回: スコーピオン、そしてステラの誕生。シマノ新時代へ。 >へ続く・・・