【釣具に歴史あり】シマノ編 第2回「スコーピオン、そしてステラの誕生。シマノ新時代へ。 」

特集:釣具に歴史ありとは?

釣具に歴史あり。数多ある釣具の歴史を紐解いていくシリーズ企画です。いかにして現代の釣具は形作られてきたのでしょうか?普段の釣行では何気なく使っている釣具。しかしその歴史に触れると、また違った見え方になるかもしれません。

第2回のテーマはスコーピオン、そしてステラの誕生。シマノ新時代へ。。誰しもが知っているあのリール達は如何にして生まれてきたのでしょうか? 謎のベールに包まれたシマノ本社に潜入!シマノのリール開発一筋、開発部門のレジェンドにインタビュー!!!

【シリーズ記事はこちら】
第1回「シマノイズムの形成」
第2回「スコーピオン、そしてステラの誕生。シマノ新時代へ。 」


バンタムの登場、そして素材革命の到来

ツリグラ編集部(以下、編): やはりシマノさんが誇る初期の名作リールと言えばバンタムだと思います。バンタム誕生の経緯をお聞かせいただけますか?

レジェンドH氏:バンタムは世界初の非円形モデル「BM-1」から繋がってきたモデルです。つまり根底にあるのは「コンパクトで持ちやすく、メタリックな質感のデザインで信頼感を表現しているリール」というところ。

編:釣り人の使い方に合わせたリールを提案したわけですか。

レジェンドH氏:その後、BMシリーズを展開していったのですが、国内産業に大きな影響を与えた出来事がありました。それが1985年頃の「素材革命」です。

編:素材の幅が広がったということでしょうか?

レジェンドH氏:具体的に言うと「樹脂素材の革命」という言い方が正しいですね。エンジニアリングプラスチック(強化繊維)が登場し、インジェクション成形が可能な時代になりました。これにより精度を高めつつ、大幅にコストを抑えた開発が可能になりましたね。

編:少しずつ現代のリールに近づいているような気がします。

レジェンドH氏:まず1984年に樹脂成型の「カーボマチック」というスピニングリールを発売しました。当時は圧倒的にスピニングリール市場だったので。インジェクション成形という柔軟性を生かして本格的なオリジナル設計を進めていったのは、国内の釣具メーカーではシマノが初だったと記憶しています。インジェクション技術の恩恵で、リアドラグでファイティングレバーといった新しい価値を釣り人に提供することができました。

当時革新的であったリアドラグを備えたシマノGT-X

編:新技術を取り入れる上で「シマノならでは」の視点があったのでしょうか?

レジェンドH氏:まず、いち早く素材特性を利用した設計をやったことが1つ。そしてもう1つは現場から開発へのフィードバックですね。新技術の「斬新さ」に加えて現場に必要な「実用性」を持たせていきました。


「原点回帰」から生まれた初代スコーピオン

レジェンドH氏:その流れで誕生したのがスコーピオンです。1991年に発売した当時は「バンタム スコーピオン」という名前でした。シマノのベイトリールには基本的に「バンタム」の名が入っていましたからね。いわゆる「スコーピオンレッド」は初代から受け継がれてきたものです。

初代から変わらない真紅の「スコーピオンレッド」

編:いよいよこのリールが出ましたね・・・! 具体的にスコーピオンが釣り人に受け入れられた理由はどのような点なのでしょうか?

レジェンドH氏:。日本でバスフィッシングが成熟期を迎え、日本人に合った日本人のためのベイトキャスティングリールを開発することにこだわった点です。素材面では、革新的な樹脂成型技術が誕生した一方、樹脂フレームに満足できない釣り人も出てきました。どうしても強度は金属素材に負けてしまいますからね。この点では、スコーピオンはアルミフレームを採用し「日本の釣り人の感性が求める質感・精度感」も重視しています。原点に戻り「しっかりしたものを作ろう」という動きがあったからこそ誕生できたリールと言えます。

編:原点、と言いますと?

レジェンドH氏:当時は色々な技術が発展しましたから、その弊害であれもこれもと機能を盛り込みがちになり・・・笑。そこで「本当に現場で必要な機能は何か?」と原点に立ち帰ったわけです。安心して魚とファイトができる、所有者を満足させるリールを再構築していきました。

編:まさにシマノさんの考え方でもある「現場実釣主義」に繋がってきますね。

レジェンドH氏:もちろん、スコーピオンは日本市場でも人気を誇ったリールです。当時も現在も村田基さんが使ってくれていますしね。
余談ですが、スコーピオンをベースにして1994年に「クラド」というリールが生まれました。アメリカ市場向けのリールです。日本にはいないようなビッグフィッシュとのファイトに耐えうること、そしてキャスティング精度といったアメリカで求められるスペックを持っています。このリールが圧倒的にアメリカ市場で爆発的な人気を博し、認知されていきました。
余談ですが、日本の「スコーピオンレッド」に対し、アメリカでは「クラドグリーン」で展開しましたね。緑色は今も昔も珍しいカラーリングでしたしね 笑。


「シマノの星」、ステラの誕生

レジェンドH氏:スコーピオンと同時期に誕生したリールがもう1つあります。それが「ステラ」です。イタリア語でステラ=星という意味で、まさにシマノの星、世界最高峰のスピニングリールです。

初代ステラ2000

編:ステラと聞けば、まさに釣り人なら誰しもが憧れるスピニングリールだと思います。初代ステラは何年に誕生したのでしょうか?

レジェンドH氏:誕生年で言うと、1992年なのでスコーピオンの翌年ですね。これもスコーピオン同様、開発の原点に立ち帰った上で「最高のスピニングリールを作ろう」という思いで作り上げたリールです。

編:「最高のリール」というと具体的にはどんな部分に注力したのでしょうか?

レジェンドH氏:現在もステラに受け継がれている考え方ですが、一言で表現すると「美しく、使う喜びのあるリール」ですね。

編:美しい・・・なるほど。これは現行ステラを手にとってみても解る気がします 笑。

レジェンドH氏:ステラは開発過程がとにかく大変で・・・。美しいリールを目指す上でデザインにも注力しました。そのためリール開発で初めて、メカに先行してデザインから企画を始め、外部デザイナーにも協力を依頼しました。流線形の美しさ・面の美しさ、といった点でも一歩先のデザインにしようと。

編:現行ステラ同様、性能も「最高」を目指したわけですよね?

レジェンドH氏:もちろん。実は、より精度の高い加工技術を取り入れようと有名カメラ部品メーカーさんの協力を得ながら作り上げていきました。頭を抱えたのは「技術」と「デザイン」を融合させていく工程。デザイナーと開発者にはそれぞれ違う観点がありますからね。発売前は言葉にできないほど苦労しました 笑。

編: 外部を巻き込んで新技術を取り入れたわけですか。 「最高」を目指して並々ならぬ熱意を感じます・・・。

レジェンドH氏:ちなみに現行モデルと違うのはリールプロテクターの部分です。現行ステラは樹脂にメッキ処理をしていますが、初代は防傷性能を高めるためステンレスに最高の表面処理を施して色味を出しています。質感も「本物」を目指していたので、素材のチョイスまでこだわっています。
2000年には数量限定販売の「ステラ ミレニアムエディション」を製作しました。生産数が少なく非常に貴重なリールですね。

スプールのブランキング加工が機種ごとに変化してきている 

レジェンドH氏:もちろん現行ステラに及ぶまで「最高のリール」を生み出し続けるべく、妥協の無い開発をしています。


——— 本記事には載せることができない程、多くのエポックメイキングとなった釣具を開発していったシマノ。最終回となる第3回では現代のシマノ、そして未来に向けた開発の考え方に迫ります。 ———

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